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RECRUIT

<林産事業での成果の現れ>
 経営指導や経営診断の効果が、はっきり出た森林組合が現れました。
 平成28年度における林産事業での素材生産量が、前年度対比で3倍~5倍に増加した林業事業体が現れました。
 3年前に経営診断を行い、踏み込んだ指摘事項を組合長や理事に示しました。当初、組合長は、「ここまで書かれるとは思わなかった」と当惑していましたが、厳しい指摘内容を正面から受け止め、改善項目の全てを受け入れ、実行に移しました。
 その結果、平成28年度の買取林産事業が、対前年度比で500%増加の約15000㎥に達することになりました。
 診断から
3年ではっきりと成果が、現れたと言えます。
 国からの補助金が減額される傾向が強まる中、熊本県内の林業事業体(各森林組合)は、買取林産事業に注力したいとする傾向が強まっていますが、実際に増産にまで至る事例は極めて少ないようです。

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<原価計算研修の成果の現れ>
 平成27年度に行った原価計算研修の内容を実際の実務に応用して、林産班(伐倒、搬出等を行う班)の作業計画や予定工数、損益分岐点算出、さらに作業班の成果測定に役立てている森林組合が現れはじめています。
 研修で取り上げた原価計算の手法は、これから行う施業箇所での予定工数(損益分岐点工数)を算出し、作業体系を構築する基礎資料を作成することに役立ちます。
 研修で取り上げた原価計算方法から求められる平均的な林業事業体の職員一人当たり1日の賃率は、約3万円代半ば(約36,000円/人日)でした。この賃率を用いて予定工数などを計算すると、それまでの経験値とほほ一致することがわかりました。
 しかし、研修で示した原価計算手法を用いれば、これまで勘と経験で作成してた見積金額、あるいは、根拠が必ずしも明確ではない単価を用いてのおおよその見積金額や、予定工数(作業日数)よりも、はるかに根拠をしっかり持った見積を算出することができるようになります。
 多くの林産担当職員は、各種の費用(現場での直接費と固定費)を見積書に盛り込み、利益の予想を行うのですが、その際は、事業利益しか考慮していない場合が多くみられます。
 本部経費などの間接費(かつ固定費)などは、見積もりに反映されおらず、その結果、事業レベルでは、黒字と見込んでしまい、いざ、決算となると赤字を計上するという事態が生じます。
 原価計算研修で取り上げた計算方法は、工業簿記における直接原価計算を応用し、それに生産工学に基づく工数概念を取り入れた方法です。したがって、勘と経験に基づく計算とは本質的に異なり、事業利益を超えてた最終的な利益を含む予想を算出することができます。

 熊本県内には、この時間管理と原価計算を組み合わせて、それを経営の基軸に据えている森林組合があります。
 その組合は、毎年6,000~8,000万円規模の剰余金(純利益)を計上し、かつ、90人以上の職員に夏冬のボーナスに匹敵する期末手当を支給しています。(高付加価値生産を実現している組合。)
 時間の管理と原価計算をきちんと行うことができれば、経営は確実に安定します。
 時間の管理は、経営工学、生産工学だけでなく、マルクス経済学の神髄に直結する事柄です。
 だからこそ、時間管理ができなければ、林業事業体の経営は安定しないと言えます。
 トヨタ生産システム、フォードシステム、テイラーシステムは、時間管理の手法です。
 林業が、今日の経済の枠組みから排除されて、補助金なしではやっていけないという我が国の現状から脱却しようとするのであれば、現代資本主義が基礎としてる時間の経済の手法(時間管理とそれに結びついている原価計算手法)を林業事業体は取り入れなければならないのです。


<熊本県内での原価計算の研修風景>
 H27年度も10月~12月にかけて、合計で6日間現場対応型の原価計算の研修を行います。
 施業箇所毎の原価を把握している林業事業体であれば、すぐに用いることのできる簡便な原価計算の手法です。
 成功している林業事業体は、一般の製造業が用いている時間管理の技術を施業に応用しています。
 時間の管理を経営の基軸に据えることにより利益を獲得できる林業経営を実現できます。









<平成27年度の森林施業プランナー1次試験と直接原価計算>
 平成27年度の森林施業プランナー1次試験に出題された問題の中に(第41問目)直接原価計算に関する問題がありました。
 *問題の骨子
 固定費  2000万円
 変動費   4500円/立方メートル(㎥)
 売上単価  8500円/立方メートル(㎥)
 目標利益  200万円

 この時の、必要販売量(㎥)を求めよ、という内容でした。
 解答は4枝からの選択でした。

 プランナーのテキスト(P.143 ~P.144)には、限界利益率の用語は示されていません。
 テキストには、損益分岐点の用語が、かろうじて図の中で示されている程度で、極めて簡単にしか説明がありません。
 コラムの表題は、「変動費と固定費」です。(p.143)
 この問題のレベルは、日商検定簿記2級工業簿記の直接原価計算の問題です。
 プランナーの受験者には、あまりにも不親切な出題だと感じました。

 <解答>
 固定費が3000万円とあるのに、変動費は4,500円/立方メートルという、単位が異なる値でい示されています。
 売上単価が8,500円/立方メートルということから、受験者は、変動費率が求められるとすぐに気付かなければなりません。

 まず求めたいのは、限界利益率です。
 これは、1-変動費率です。
 テキストには、「変動費」は記載されていますが、「変動費率」はありませんし、さらに、「限界利益率」などいう用語も示されていません。

 次に、損益分岐点は、固定費/限界利益率で求められます。
 ところが、この問題は、利益を200万円見込んだところでの売上高を求めて、それに照応する販売量(㎥)を求めさせています。この点も受験者には、結構高いハードルです。
 
 とにかく、必要な売上高を求めます。
 3000万円+200万円=3200万円、(32,000,000円)
 必要売上高 =32,000,000円/(1-変動費率)
       =32,000,000/(1-0.529411764・・・・)
       =32,000,000/0.47
       ≒68,000,000
 そこで、売上単価が、8,500円/㎥とあることから
 68,0000,000円/8,500円/㎥≒8,000㎥

 答えは8,000㎥ということになります。
 簡単な問題のようですが、結構難しいです。
 こういう問題を出すのであればテキストの内容をもっと充実してもらいたいと強く感じます。




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